マクドナルドを退職した人が起業に活かせる経験と最初の一歩

「起業のためにマクドナルドは辞めた。でも、次に何をすればいいのかわからない・・・」

「起業したいけれど、ハンバーガーを作っていた経験が役に立つのだろうか・・・」

マクドナルドを退職後、そんな不安を感じている人もいるのではないでしょうか。

私は16歳でマクドナルドのアルバイトを始め、退職と復職を経験しながら、29歳で店長になりました。31歳で退職するまで、ドライブスルー店舗や商業施設内の店舗など、異なる環境で店長を務めました。

 

その後、Webライターという別の仕事に進みました。そこで気づいたのは、文章を書く技術とは別に、仕事を進める土台がマクドナルド時代にできていたことです。お客様の要望を聞く。納期から逆算する。相手に伝わるように説明する。売上だけでなく、かかった時間や費用を見る。店舗で繰り返していたことが、自分で仕事を受けるようになってからも役立ちました。

 

マクドナルドの経験は、そのまま起業後の成功を保証するものではありません。

ただし、自分の経験を言葉にして、相手の困りごとに結びつければ、事業を始めるときの強みになります。

 

このコラムでは私自身の経験をもとに、起業を目指す方に向けてマクドナルド経験を起業時に活かす方法をお伝えします。

 

マクドナルドを辞めても身についた力は残る

マクドナルドを辞めても身についた力は残る

 

「自分にはマックの経験しかない」と考えると、できることが少なく感じられます。

 

しかし、担当していた仕事を細かく振り返ると、他の仕事にも持ち出せる力が見えてきます。たとえば、昼のピークを乗り切るためには、ただ速く手を動かすだけでは足りません。事前の準備、周囲との連携、優先順位の判断が必要です。新人へのトレーニングも、手順を読み上げるだけでは終わりません。

 

どこでつまずいているかを見て、伝え方を変える必要があります。

 

マクドナルドでの経験 身につく力 起業後に活かせる場面
シンクワークやピーク前の準備 段取りを組む力 納期から逆算して仕事を進める
接客や客席での対応 相手の困りごとを捉える力 顧客への聞き取りやサービス改善
新人のトレーニング できるようになるまで支える力 研修、業務手順づくり、外注先への説明
発注や在庫管理 無駄と不足を予測する力 仕入れや経費の管理
シフトマネジメント 人と時間を配分する力 複数案件の進行やチーム運営

 

すべての役割を経験している必要はありません。クルーとして働いていた人にも、自分なりに工夫した仕事があるはずです。役職名よりも「どんな場面で、何を考えて動いたか」に、その人の強みが表れます。

 

起業するときに役立つマクドナルドで学んだ力

退職後に経験を活かすには、店舗の仕事を、これから始める仕事に置き換えて考えることが大切です。私が特に役立つと感じたのは、次の四つの力でした。

 

段取り力は一人で仕事を回すための土台になる

私がシンクワークから学んだのは、「速くやる前に、進め方を考える」ということです。大量の洗い物を前に、目についたものから手をつけるだけでは、時間内に終わりません。種類や大きさを分け、洗浄や殺菌に必要な時間を踏まえて、作業を組み立てます。

 

起業後も同じです。たとえば記事を一本仕上げる仕事なら、資料の確認、調査、構成、執筆、見直しという工程があります。締め切り直前に書き始めても、必要な資料がなければ作業は止まります。店舗で「ピーク前に何を準備しておくか」を考えていた経験は、「納品前に何をそろえておくか」という判断に使えます。一人で仕事を始めるほど、この段取りが自分を助けてくれます。

 

接客経験はお客様が本当に求めていることを考える力になる

私が在籍していた当時、サービスの考え方として学んだのが「相手がしてほしいと思うことをする」というプラチナルールでした。ただし、相手の希望は、こちらが想像するだけではわかりません。表情や状況を見ながら、必要に応じて確かめることも大切です。

 

Webの仕事でも、お客様が「記事を増やしたい」と話したとき、記事の本数だけが目的とは限りません。問い合わせを増やしたいのか、よく受ける質問を説明したいのか、サービスの違いを伝えたいのか。目的によって、必要な内容は変わります。起業すると、自分が売りたいものを先に考えがちです。そこで接客の経験を思い出すと、「この人は何に困っているのだろう」と、相手から考え始められます。

 

トレーナー経験は人を支えるサービスにつながる

トレーナー経験は人を支えるサービスにつながる

 

新人に手順を説明しても、すぐにできるとは限りません。緊張しているのか、順番がわからないのか、説明が多すぎたのか。同じところで止まっていても、理由は人によって違います。トレーナーの経験には、説明する力だけでなく、相手を観察し、できるようになるまで支える力が含まれています。

 

この経験は、店舗の新人教育、業務マニュアルの整備、店長や管理職の相談支援などを考える際の土台になります。ただ、マクドナルドでの方法をそのまま他社へ持ち込むのではなく、相手の職場の人数、業務、悩みに合わせる必要があります。「教えた経験がある」から一歩進んで、「どんな相手の、どんなつまずきを支えられるか」まで考えると、サービスの形が見えてきます。

 

発注やシフト管理の経験は利益と仕事量を見る力になる

発注では、不足を防ぎながら、余らせすぎないように考えます。シフトでは、必要な仕事量と人員のバランスを見ます。この感覚は、自分で事業を運営するときにも役立ちます。たとえば、売上が増えても、外注費や自分の作業時間がそれ以上に増えれば、手元に残るものは少なくなります。安い価格で仕事を引き受け続けると、忙しいのに利益が残らない状態にもなります。

 

確認したいのは、次のような点です。

 

  • ・一件の仕事に、準備や修正を含めて何時間かかるか
  • ・売上から経費を引いたあと、いくら残るか
  • ・今の仕事量で、約束した品質と納期を守れるか
  • ・継続して受けても、無理のない価格になっているか

 

売上の大きさだけで判断せず、仕事を続けられる状態かを見る。店舗で数字と現場の両方を見ていた経験は、ここでも活きます。

 

マクドナルドの経験を売れるサービスに変える方法

マクドナルドの経験を売れるサービスに変える方法

 

経験があることと、その経験にお金を払ってもらえることには、距離があります。その距離を縮めるには、「自分が何をしてきたか」だけでなく、「誰の何を助けられるか」を整理する必要があります。

肩書きよりも具体的な経験を言葉にする

 

「元マクドナルドの店長です」という肩書きだけでは、依頼できることが伝わりにくいものです。次のように、実際に行っていたことまで説明すると、相手は相談する場面を想像しやすくなります。

 

経験の説明 相手に伝わりやすい説明
トレーナーをしていました 新人がつまずく工程を見つけ、説明と練習の進め方を工夫していました
店長をしていました 人員配置や新人育成など、店舗を回すための課題に取り組んでいました
接客が得意です お客様の状況を見て、必要な案内や対応を考えていました

 

ここで大切なのは、実際に経験した範囲で話すことです。数字の実績があれば役立ちますが、覚えていない数字を作る必要はありません。困った場面、自分の対応、その後の変化を説明するだけでも、経験の中身は伝わります。

 

最初のサービスは一つの困りごとに絞る

店舗経験が豊富でも、最初から「経営のことなら何でも相談できます」と広げると、何を頼めばよいのかわからなくなります。

 

たとえば、人材育成が得意なら「新人に何度教えても定着せず、困っている店長の相談相手」。業務整理が得意なら「忙しい時間帯の準備と役割分担を、一緒に整理する支援」。文章を書く技術を身につけるなら「現場経験を活かした飲食店向けの採用記事制作」。こうした形が考えられます。

 

いずれも、事業の候補です。経験との相性だけで決めず、相手がその問題に困っているか、対価を払ってでも解決したいかを確かめる必要があります。

 

小さく提供して反応を確かめる

起業を考えたとき、最初から立派なホームページや、幅広いサービスをそろえる必要はありません。まずは一つの課題について、対象、提供内容、料金、対応範囲を決め、少人数に提供する方法もあります。

 

提供後には、「何が役に立ったか」「説明がわかりにくかった点はどこか」「次に頼むなら何を期待するか」を聞いてみます。その反応をもとに内容を直す。店舗で行っていた、実行して振り返る習慣を、今度は自分のサービスに使うのです。

 

店舗経験を活かしながら起業後に学びたいこと

店舗経験を活かしながら起業後に学びたいこと

 

マクドナルドでは、設備、商品、仕入れ、教育の仕組みなど、整えられた環境の中で働いていました。起業後は、自分で用意しなければならないものも増えます。ここは、店舗経験だけで埋めようとしないほうが現実的です。

 

特に、次の点は事業に合わせて学ぶ必要があります。

 

  • ・お客様に見つけてもらい、依頼につなげる方法
  • ・提供するサービスに必要な専門知識や技術
  • ・見積もり、契約、請求など、取引の進め方
  • ・経費や入出金を把握し、資金を管理する方法

 

私も、マクドナルドの経験だけで文章が書けるようになったわけではありません。Webライターとして仕事をするには、文章の組み立て方や情報の調べ方など、別に学ぶことがありました。それでも、相手の要望を理解し、約束した仕事を仕上げる土台は、以前の経験に支えられていました。

 

「経験があるから学ばなくていい」ではなく、「経験を土台に、足りないものを学ぶ」。この考え方が、異なる仕事に進むときには役立ちます。

 

Up to Youは退職後の選択にも活きる

Up to Youは退職後の選択にも活きる

 

私がマクドナルドで学び、今も大切にしている言葉が「Up to You」です。私はこれを、自分の人生の選択を自分で引き受ける言葉として受け止めています。音楽の夢を追って退職したことも、別の仕事を選んだことも、地元に戻って再び働いたことも、自分で決めました。振り返れば、どの選択も思いどおりに進んだわけではありません。それでも、その経験を次の選択に活かすことはできます。

 

起業でも同じです。最初に考えたサービスが合わなければ、対象や内容を見直せます。すぐに独立するほかに、生活を支える仕事を続けながら準備する道もあります。自分で決めることは、一人で全部抱え込むことでもありません。最初の一歩として、次の三つを書き出してみると整理しやすくなります。

 

  1. マクドナルドで、人からよく頼まれていた仕事は何か
  2. その経験で、今困っている誰かを助けられないか
  3. 小さく提供するとしたら、何をどこまで行えるか

 

退職したからといって、マクドナルドでの経験がリセットされるわけではありません。段取り、接客、人材育成、数字を見る感覚は、次の仕事にも持っていけます。大切なのは、その経験を自慢することより、相手の役に立つ形へ変えることです。まずは、得意だった仕事を一つ選び、それで誰の何を助けられるかを考える。そこから、退職後の経験の使い道と、自分らしい事業の形が見えてきます。